【鈴木雅光の投信Now】投資信託の純資産残高が過去最高を更新

2014年8月1日 11:52

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

  6月の国内投資信託の純資産残高が過去最高を記録した。83兆5640億円で、この額はリーマンショック前の2007年10月に記録した82兆1518億円を1兆4122億円上回っている。

  この間、一時は50兆円を割り込むところまで純資産残高は減少したが、投資信託に関して言えば、リーマンショックの痛手から立ち直ったことになる。

  ただ、本当に中身が伴っているものなのかどうかという点については、一考の余地があるだろう。

  たとえば運用ファンド本数は、相変わらず増加傾向を辿っている。本数の増加は、2013年5月以来、14カ月連続の増加で、6月時点の本数は5175本。1997年12月以来の水準に戻ったが、投資信託は運用のファンドの本数が増えているから活況であるとは一概に言えない。

  このように運用ファンドの本数が増えたのは、今年1月からスタートしたNISA向けのファンドを、各投資信託会社が設定したこともあると思うが、いずれにしても、新しいファンドをどんどん設定する一方、既存のファンドをケアしないという販売金融機関、投資信託会社の営業スタンスには、やはり違和感を覚えざるを得ない。

  本来、投資信託は長期保有の商品であるのだから、新規設定ファンドで資金を集めるのではなく、既存のファンドをしっかり運用し、そこで資金を集めるのが本来の姿だ。

  いくら全体の純資産残高が増えているといっても、同時にファンドの本数も増えているのは、明らかに新規設定ファンドで資金集めをしていることを物語っている。また、ファンドの本数が増える分、1ファンドあたりの平均純資産残高は減少する恐れがある。ファンドの純資産残高が減少すると、今度はファンドの運用の継続性に支障が生じる。本来、長期保有の商品なのに、強制償還などで長期保有できなくなるリスクが高まってしまうのだ。

  こればかりは個人投資家の努力ではいかんともしがたいので、投資信託を設定・運用している投資信託会社、投資信託を販売している金融機関が、目先の手数料稼ぎではなく、長期的に個人の資産運用マーケットを拡大させていくという意思を強く持ち、ファンドの粗製乱造に歯止めを掛けて行く必要がある。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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