阪大、素粒子ミュオンを使って物質を透視する新しい手法を開発

2014年5月31日 20:12

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電子ビームX線分析とミュオンビームX線分析の違いを示す図。表面近傍を見る電子ビームに対し、透過力の高いミュオンビームは入射エネルギーを変えることで、バルク状態の任意の深部まで届く(大阪大学の発表資料より)

電子ビームX線分析とミュオンビームX線分析の違いを示す図。表面近傍を見る電子ビームに対し、透過力の高いミュオンビームは入射エネルギーを変えることで、バルク状態の任意の深部まで届く(大阪大学の発表資料より)[写真拡大]

 大阪大学の寺田健太郎らによる研究チームは、J-PARCの世界最高強度パルスミュオンビームを使って、物質内の構造を把握する新しい手法を開発した。

 素粒子の一つであるミュオンは、電子と同じ電荷を持ち、電子の200倍の質量を持っている。ミュオンを取り込んだ物質から発生する特性X線は、高い物質透過能力を持つため物質内部の構造を把握するのに有効であると考えられていたものの、これまで実現されていなかった。

 今回の研究では、J-PARCの世界最高強度のパルスミュオンビームを用いて実験をおこない、数mm厚の隕石模擬物質から軽元素の非破壊深度分析、有機物を含む炭素質コンドライト隕石の震度70μmと深度1mmにおける非破壊元素分析に成功した。

 この研究成果は、物質内部の構造を破壊せずに把握することができる人類の新しい眼を手に入れたことを意味しており、2020年帰還予定のはやぶさ2が持ち帰るであろう小惑星のサンプル解析などへの応用が期待されている。

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