【経済分析】岩田日銀副総裁にのぞむこと(下)

2014年5月30日 18:15

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【5月30日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

実は前回消費税が引き上げられた97年の時も今回と似たような状況にありました。前年の96年に1ドル=102円から116円まで円安が進み、消費税引き上げ直前の97年2月には輸入物価は前年比15%上昇し、増税前にすでに消費者物価は上昇傾向にありました。景気は増税実施直後の97年5月にピークを迎えて後退局面に入りましたが、増税がきっかけで景気が悪化したのではなく、増税前の物価上昇で日本経済はすでに弱体化していたのです。

そのことを示しているのはこの消費者態度指数のグラフです。

消費者態度指数とは、内閣府が毎月発表している「消費動向調査」で、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の4つの項目について、今後半年間に良くなると思うか、悪くなると思うかを尋ねた結果を指数化した、いわゆる消費マインド調査です。消費者が景気の先行きをどうみているのかを示しているため、景気動向指数の景気先行指数にも採用されています。

前回の消費増税時には、足元の物価の上昇傾向や97年4月の消費増税を控えて、消費者態度指数は景気先行指数のピークアウトよりも4か月早く、96年7月から悪化に転じました。

今回もまた、消費者態度指数は昨年5月の45.6をピークに、この4月には36.6まで急速に落ち込んでいます。(なお、ここでの消費者態度指数は、景気先行指数に採用されている「総世帯」の原指数です)

消費増税の影響もありますが、消費者態度指数が悪化に転じた昨年5月は、ちょうど消費者物価がプラスに転じたタイミングに重なります。皮肉にも、日銀の物価目標が達成に近づくほど消費マインドが悪化するという結果となっています。日銀の崇高な政策目標は庶民の感覚には合わない、ということではないでしょうか。

岩田副総裁は、1年前の就任時に、「物価目標が達成できなければ辞任する」と述べました(昨年の4/29ブログ)。良くとれば非常に潔い姿勢をみせたと言えるわけですが、悪くとれば非常に無責任な発言のように感じられます。円安が止まり足元で輸入物価の伸びが急速に鈍化していることや、今後の景気の見通しを踏まえると、岩田副総裁が期する2%の物価目標の達成はおそらく難しいと思いますが、だからと言って副総裁の職を辞任しなければならない道理はありません。おそらく学者としてのプライドがそのような発言をさせたのでしょうが、私情でそんなに簡単にやめてもらっては困ります。

もともと学者が職業だったわけですから、政策の結果をしっかり検証して考えを改めるべきところは改めた上で、それを次なる施策に生かしていてもらいたいと思います。【了】

のだせいじ/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)がある。著者のブログ『私の相場観』より、本人の許可を得て転載。

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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