【アナリスト水田雅展の相場・為替展望】週後半の3月期決算発表本格化や30日の日銀会合に向けて波乱の可能性

2014年4月20日 18:51

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

(4月21日~25日)

  来週(4月21日~25日)の株式・為替相場は、大勢としてはレンジ相場で週前半は様子見ムードの強い展開となりそうだが、週後半には3月期決算企業の業績発表が本格化し、さらに次週30日の日銀金融政策決定会合などの重要イベントに向けて波乱の可能性がありそうだ。また24日の日米首脳会談に向けてTPP(環太平洋経済連携協定)交渉が進展すれば好感する可能性もあるだろう。

  前週(4月14日~18日)の日本株式市場は、16日に日経平均株価が今年2番目の上げ幅420円87銭高を記録するなど、総じてリバウンドの展開となった。主要株価指数の週間騰落率を見ると、日経平均株価は556円22銭(3.98%)上昇して週末18日の終値は1万4516円27銭だった。TOPIXは39.28ポイント(3.46%)上昇して週末18日の終値は1173.37だった。

  いずれも軟調だった前々週(4月7日~11日)の下落幅の概ね半値戻しの形となった。前々週の大幅下落に対して売られ過ぎ感を強めたことに加えて、米国株が概ね堅調だったことや、16日発表の中国第1四半期GDP(1~3月)が市場予想を若干上回ったことが安心感に?がり、買い戻しが優勢になったようだ。ただし18日の東証1部市場の売買代金は1年4カ月ぶりの低水準と様子見ムードも強いようだ。

  為替は日本株のリバウンドの動きも睨みながら、政府が4月の月例経済報告で国内景気の基調判断を下方修正して日銀の追加金融緩和に対する期待感が高まったこと、米10年債利回りが前々週末の2.6%台前半の水準から17日には2.7%台前半の水準まで上昇したことを受けて、週初14日の1ドル=101円台前半の水準から18日には1ドル=102円台半ばの水準までドル高・円安方向に傾いた。

  来週初21日の株式市場は、前週末18日の米国市場が休場だったため、様子見ムードが強く方向感に乏しいスタートとなりそうだ。その後は週後半に向けて徐々に本格化する国内主要企業の3月期決算発表に個別に反応する展開だろう。日米のTPP交渉に関しては現時点で合意の見通しが立っていない状況だが、24日の日米首脳会談に向けて大筋合意すれば好感する可能性があるだろう。

  また次週4月29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の日銀金融政策決定会合・展望リポート、米第1四半期GDP速報値、そして5月2日の米4月雇用統計といった重要イベントに向けて思惑が交錯し、波乱の展開の可能性もありそうだ。

  日銀の追加金融緩和に関しては、消費増税の影響を見極めるという点で、さらに政府が6月に取りまとめる予定の成長戦略に連動してという点で、7月以降という見方が優勢だ。しかし消費増税による景気の落ち込みを緩和し、15年10月消費税率引き上げ第2弾(8%から10%へ)の実施判断に向けて、7~9月期GDPのプラス成長を確実なものにするために、早期追加金融緩和に対する期待感も根強い。次週30日の日銀金融政策決定会合に向けて、市場で再び追加金融緩和期待が高まるのか、それとも今回は追加金融緩和を督促する動きを強めるのかが焦点だろう。

  為替は概ね1ドル=102円台での推移を想定する。米FRB(連邦準備制度理事会)の緩和的な金融政策が長期化するとの見方が優勢になって米10年債利回りが低下したが、次週29日~30日の米FOMCでテーパリング(量的緩和縮小)を継続し、15年春~夏に向けてゼロ金利解除が視野に入ることを考慮すれば、米10年債利回りが一段と低下する可能性は小さいだろう。さらに日銀の追加金融緩和に対する期待感が高まる一方で、5月2日の米4月雇用統計に対して強い内容を予想する見方が優勢になれば、米10年債利回りが上昇して1ドル=103円台のドル高・円安方向に傾く可能性もあるだろう。

  株式市場では、消費増税の影響に対する警戒感をかなり織り込んだと考えられるが、国内主要企業の14年3月期決算発表では15年3月期の業績見通しが焦点となる。15年3月期は金融を除く全産業平均で14年3月期比10%程度増益という見方が優勢のようだが、消費増税の影響(駆け込み需要の反動減と消費マインドの低下)による国内販売数量減少、ドル高・円安進行一服による増益要因としての円安メリット縮小、さらに賃金上昇や原燃料価格上昇といったマイナス要因を、国内消費の喚起策、輸出数量の拡大、製品価格への転嫁、高付加価値製品の拡販などで吸収できるかどうかを考慮すれば、14年3月期比10%程度の増益達成に向けてのハードルは高い。

  もちろん、セクターや個別企業の戦略によって業期見通しは異なるが、自動車セクターなどの主要企業は期初時点では保守的な見通しを公表する傾向が強いことも考慮すれば、全体として市場の期待を上回る強気見通しが得られる可能性は低く、市場が警戒感を強める可能性があるだろう。ただし一方では、4月第1週~第2週の状況を見て、消費増税の影響はそれほど深刻ではないとの観測も広がり始めているようだ。こうした観測が下値を支える要因となるかどうかも注目される。

  海外要因では、ウクライナ情勢に関しては米ロの外交的駆け引きが続くが、最悪の事態に向かう可能性は小さいとして過度な警戒感は後退している。中国の景気減速や理財商品デフォルト(債務不履行)に関しては、中国第1四半期GDPが市場予想をやや上回ったことで当面の安心感に?がった。23日の中国4月製造業PMI速報値(HSBC)が市場予想を下回った場合は売り仕掛けの材料とされそうだが、景気減速はもはやサプライズとはならず、中国政府の景気刺激策に対する期待感もあって影響は一時的・限定的だろう。

  株式市場での物色動向としては、徐々に本格化する14年3月期決算発表に反応して個別物色の動きを強める。主力銘柄を手掛けにくくなった場合に、材料系の銘柄や消費増税の影響を受けにくい好業績の中小型株に対して資金が流入するかが焦点となる。

  その他の注目スケジュールとしては、4月21日の日本3月および13年度貿易統計、米3月シカゴ連銀全米活動指数、米3月景気先行指数(コンファレンス・ボード)、22日の米2月住宅価格指数、米3月中古住宅販売、23日のユーロ圏4月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、米3月新築一戸建て住宅販売、米4月製造業PMI速報値(マークイット)、24日の日本3月企業向けサービス価格指数、独4月IFO業況指数、米3月耐久財受注、25日の日本3月全国・4月東京都区部消費者物価指数などがあるだろう。

  その後は、4月29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の日銀金融政策決定会合・展望リポート、米第1四半期GDP速報値、5月2日の米4月雇用統計、7日~8日の英中銀金融政策委員会、8日のECB理事会、12日の日本4月景気ウォッチャー調査、15日の日本4月消費動向調査、20日~21日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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