成長を続ける産業機器・産業用ロボット市場を握る日本企業

2013年8月4日 20:18

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記事提供元:エコノミックニュース

アヴネット社と京都の半導体メーカー、ロームが共同開発したザイリンクスFPGA用「ミニ・モジュール・プラス開発システム電源」

アヴネット社と京都の半導体メーカー、ロームが共同開発したザイリンクスFPGA用「ミニ・モジュール・プラス開発システム電源」[写真拡大]

 この7月の経産省の発表によると産業用ロボットのマーケットは、この5年間でおよそ60%の成長を見せた。そのうち電子部品実装機を含めた広義の産業機器の世界市場は、2011年で1兆428億円、日本企業のシェアは57.3%と世界市場でナンバーワンの地位にいる。

 その産業機器&ロボットを運用・制御するコンピュータの心臓部がCPU(Central Processing Unit)である。そして、近年このCPUを取り込んだFPGA(Field Programmable Gate Array)という集積回路の開発が進んでいる。FPGAは、産業用ロボットなどに実装した後でもプログラムを変更できるという柔軟性のあるチップだ。産業機器に必須のメインチップで、世界でザイリンクス社とアルテラ社というふたつの会社がそのマーケットを押さえている。

 半導体メーカーのロームがこの7月、FPGAで世界市場を二分する一方の雄、ザイリンクス社のFPGAに最適な電源モジュールボードをアヴネット社と共同開発することに成功した。それ以前の3月、同社はインテル社の次世代タブレット用CPU用電源ICとして推奨部品となる製品を発表している。ここでのポイントは、日本の半導体メーカーが、世界に冠たるCPUやFPGAの電源部を担う製品を開発したことだ。

 今回開発したFPGA電源モジュールは、ザイリンクス7シリーズというメインチップが要求する高速過渡応答性を持ちながら、95%以上の高効率で作動する。また、ザイリンクスFPGAが必要とする8種類の電源電圧を生成し、起動時に電源を投入/遮断する順序と主電源の投入タイミングを制御する(これを「電源シーケンス」と呼ぶ)回路を搭載している。こうした設計が可能なのは、同社が長年培ってきた職人技ともいえるアナログ技術を活かしているからだ。

 このロームの「電源シーケンス」を含むモジュールのおかげで、ザイリンクスFPGAを使う産業機器設計者の設計負荷が大幅に低減。産業用ロボットの運用までの期間も短縮できるという大きなメリットが生まれる。

 ロームは近年、産業機器分野をメインターゲットに据えている。今回、アヴネット社と協同でザイリンクスFPGAの電源モジュール市場に参入したことは、産業機器分野で大きな一歩を踏み出した証左となる。

 産業用ロボットの需要は自動車産業と電子・電気産業分野で過半数を占めるとされる。まさに日本の得意分野である。これら産業の生産機器を運用・制御する電源部。この電源モジュールの生産を日本の半導体メーカーの「職人技=アナログパワー技術」が担う。ここに日本の半導体メーカーの光明を見出せるのではなかろうか。

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