ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:最終回 良い採用活動とは(まとめ)

2012年2月24日 13:58

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 これまで中小企業の採用活動のポイントを、プロセスを追って説明してきましたが、本コラムもいよいよ最終回。最後にこれまでのまとめとして、良い採用活動とは何かという点を考えてみたいと思います。

■「良い採用活動」の指標は何か?
 「良い採用活動とは?」と問われれば、多くの人は「希望する資質の人材を予定した人数採用できること」と言うでしょう。「良い人が○人採れた」という“結果”で見ているということです。

 もちろん、良い採用活動がどうかの判断に“結果”は重要です。しかし私が今まで経験してきた中での実感は、「プロセスを評価する重要性」です。もう少し正確にいうと「採用活動のプロセス毎に見える結果をきちんと評価する」ということです。

 少し例を挙げてご説明します。

■応募者が多いと喜ぶが、はたして・・・。
 応募者殺到の人気企業はさておき、一般的な中小企業であれば、応募者を集めること自体に苦労することも多いはずです。エントリー数や応募者が多かったりすると、経営者や人事担当者は何かうれしそうにしているものです。

 これは、応募者が多ければ人数は確保できるだろうという“数”の部分と、良い人材が混じっている確率が上がるだろうという“質”の部分の、それぞれの皮算用によります。確かに一般的には応募者数に対する比率で数や質を予測しますから当然と言えば当然ですが、応募者が多ければそれが良い採用活動と言えるのでしょうか?

 見方を変えて、採用活動の効率を中心に考えると、最も良いのは採用人数ピッタリの応募で、全員が採用基準に達している場合です。その人たちが全員「御社が第一志望です!」と言って、全員が入社するというのが最も良い状況です。条件に合った応募者数が最小限で集まることが望ましいわけです。

 そう考えると、応募者の中で意図した人材の比率(採用基準到達比率)が高ければ良い活動と言え、いくら応募者が多くても条件に見合わない人が多いならば採用活動としては非効率ですから、良い活動とは言えないはずです。事前の情報提供に問題があるかもしれないという判断もあり得るでしょう。

■辞退者が多いのは悪いのか?
 これは辞退者についても同じ事が言えます。
 選考辞退や内定辞退には、会社にとって“良い辞退”と“悪い辞退”があります。この違いをきちんと評価する必要があります。

 “良い辞退”とは、相互理解が深まった上での辞退です。採用基準に達しない人、会社との相性が合わない人が先に身を引いてくれれば、採用活動としては良い事です。採用告知や会社説明が適切であるという評価もできるでしょう。早期の辞退は、どちらかといえば“良い辞退”と見てかまいませんが、意図しない人材を集めてしまっていることには注意が必要です。

 一方“悪い辞退”は、文字通り採用したい人に振られるということです。会社に幻滅しての辞退は良い訳がありません。これは自社をいろいろな面でレベルアップして、幻滅されないようにしていく以外に対策はないでしょう。

 選考が進んだ上での辞退、さらには内定辞退も、どちらかといえば“悪い辞退”でしょう。ただこれは、最後の一押しが足りなかったということでは力不足ですが、最終候補まで残ったということでは健闘したとも言えます。どこと競合したのか、何が辞退の決め手だったのかを評価しなければ、一概には何とも言えないところです。

 辞退されないようにと、“様々な配慮”と“押し”を駆使して、辞退しそうな人を何とか入社までこぎつけても、結局は退職してしまうことも多いはずです。辞退する時期が後ろにずれただけとも言え、その方が会社にとっての痛手は大きいはずです。気が合わないことが早めにわかったとするなら、辞退も悪い事ばかりではありません。

■良い流れを作れてこその「良い採用活動」
 ある採用担当者のお話ですが、自分の評価は採用予定数を満たすことだとばかりに、応募者をあの手この手で口説き、要望があればできる限り聞き入れ、社内現場には何とか受け入れられないかと交渉し、その時は無事に採用予定数を確保したそうです。

 採用担当者はその功績が評価され、希望する別部門に異動されたそうですが、その後3年間のうちに、その時期に採用した人は全員辞めてしまったそうです。これこそ流れやつながりを無視した「悪い採用活動」の典型のように思います。

 このように、最終結果や一部の局面だけに目を奪われていると、本質的な評価を見誤ります。採用活動は全体がつながった“流れ”ですので、その過程で出て来る状況を見極め、適切な対応をすることが良い採用活動につながります。

 心構えとして申し上げたいのは
・目の前の事象で一喜一憂しないこと。
・三段論法だけで単純化しないこと。(応募が少ない→質が低い→数を増やせ など)
の2点です。

 最後に私が考える「良い採用活動」ですが、“良い人が採用できること”はもちろん、“いかに会社のファンを増やせたか”という指標を持っています。

 「採用活動は広告宣伝活動でもある」と何度か書かせて頂きましたが、採用活動は多くの社外の人と接する事ができる貴重な機会です。自分が応募した会社や応募を検討して目に留めた会社は、意外に覚えているものであり、不採用者も辞退者も募集広告を見ただけの人も、社員以外のすべての人は、顧客になり得る人達です。

 その人達に「あの会社はいい雰囲気だった」「みんな礼儀正しかった」「結構いい仕事してるんだ・・・」「入りたかったけどなぁ。残念!」などと思ってもらえて、あわよくば会社のファンになってもらえれば、こんなにすばらしいことはありません。

 そう思ってもらうには、それに見合う会社にしなければならないことは言うまでもありません。それこそ経営者の皆さんの腕の見せどころです。「良い採用活動」の原点は、“本業を磨くこと”と言ってよいのかもしれませんね。

 本コラムは今回で最終回となります。長きに渡ってお付き合い頂き、有難うございました。

 あらためて新テーマで執筆する予定ですので、引き続きそちらもご覧いただければ幸いです。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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