計画停電時の休業手当~会社を守る労務管理①~

2011年4月11日 18:47

印刷

 東北地方太平洋沖地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々に心からお悔やみ申しあげます。一刻も早い復旧を心からお祈り申しあげます。

 震災後、関東・東北地方では深刻な電力不足により計画停電が行われていますが、これにより休業した場合の賃金について、厚生労働省は行政通達「計画停電時の休業手当について」を発出しました。以下に転載します。

==================================================================
基監発0315第1号
平成23年3月15日
都道府県労働局労働基準部監督課長 殿
厚生労働省労働基準局監督課長

計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取り扱いについて

 休電による休業の場合の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第26条の取り扱いについては、「電力不足に伴う労働基準法の運用について」(昭和26年10月11日付け基発第696号。以下「局長通達」という。)の第1の1において示されているところである。
 今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。この場合における局長通達の取り扱いは下記のとおりであるので、了知されたい。

1 計画停電の時間における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。

2 計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当すること。ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。

3 計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。

==================================================================

 計画停電が実施されると多くの工場や営業所で操業・営業を停止することになり、従業員に対して休業を命じざるを得ませんが、その場合、当該休業時間中において労基法上の休業手当の支払義務の問題が発生します。

 労基法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められており、例えば、生産調整のための一時帰休や監督官庁の勧告による操業停止の場合は休業手当を支払わなければなりません。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は使用者の責に帰すべき事由に該当せず、休業手当の支払義務はありません。

 この問題について上記通達では、まず第1項で、計画停電が実施されている時間帯の休業は会社の不可抗力の事由による休業であり、労基法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当せず、休業手当の支払義務はないと明言しています。

 一方、計画停電が実施されている前後の時間帯を含めて休業した場合については、第2項で、計画停電の時間帯以外の休業は原則として休業手当の支払義務があるとしていますが、例外として「計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるとき」には、他の時間帯を含めて休業手当の支払義務はないとしています。どのような場合がこの例外事由に該当するのかは、「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案する」としています。

 なお、第3項では、予定されていた計画停電が実際には実施されなかった場合について、「計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期」を踏まえて上記に基づき判断することとしています。計画停電の実施、未実施の公表があまりに切迫しているここ数日のような場合は、休業手当の支払義務は発生しないと思われます。

 以上は、あくまでも法律論と行政通達の解説です。会社の状況や経済的体力に応じて、また労使の話し合いによって給料や休業手当を支給することについて何ら問題はありません。むしろ法律論や行政通達に固執せず、労使で協力し合ってその会社独自の解決策を見出すことが本来の労務管理です。

(経営コンサルタント・中山 幹男)
(専門コンサルタント・社会保険労務士 多田羅秀之)

著者プロフィール

中山 幹男

中山 幹男(なかやま・みきお) 株式会社A&Mコンサルト 代表取締役

大阪大学工学部機械学科卒業後、大手自動車メーカにおいて商品企画、設計・開発、品質管理、環境対策業務等に従事。その後大手コンサルティングファームの経営コンサルタントとして7年間勤務。
韓国の大手家電メーカを手始めに製造業を中心としたコンサルティングを実施する。1997年に「現場主義を貫き、行動的に活動して成果を出す経営コンサルティング」を目指し、A&Mコンサルトを設立し現在に至る。激変の環境変化の中で、企業の永続的な存続を前提に戦略構築、仕組改革、組織風土改革のトライアングル視点で企業の体質強化を図る。
会社URL  http://www.a-and-m.biz

記事の先頭に戻る

関連記事